世界で初めて型式認定を取得した自動運転装置搭載の新型「LEGEND」の発売を支えたのは、これまで以上に重要度が高まった新しい技術の数々です。新型LEGEND開発のためセンシング領域の設計に携わった中山と藤田は、日進月歩の技術に向き合いながら挑戦を続けています。携わってきたプロジェクトを振り返りながら、自動運転技術に携わる魅力やHondaの風土について語ります。
次世代の自動運転車を支える重要な領域──センサの設計に携わるふたりの挑戦
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精密機器に携わったのち、自動運転に興味を持ってHondaの門を叩いたふたりの社員
視界外装開発課では、バンパーやガラス、ルーフ、灯体といったクルマの顔となるパーツの開発を進めています。プロダクトとして自動運転車を世に出すためにはソフトウェアのみならず、車体としての設計が重要な要素です。前述のクルマとしての顔や、性能に大きな影響を与えるパーツの開発を進めているのが、中山と藤田です。
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当課は、カメラやセンサで得られる視界やパーツが集まってできたクルマの顔を人間中心で考えて具現化し、お客様へタイムリーに喜びを提供し続けるという使命を持つ部署です。ブランドデザインや安心安全、爽快な視界を両立させるための開発を進めています。
藤田は2016年、中山は2017年と、ふたりはほぼ同時期にHondaへ中途入社しました。
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私はHondaに入社する前、医療機器やインクジェットプリンターなどの技術領域に携わっていました。HondaはASIMOなど今まで見たことのないモノを世の中に出している会社で昔から憧れがありました。転職を考えていたタイミングでHondaが自動運転のセンシング領域の中途採用をしていることを知り、興味を持ちました。
これまでの知見が活かせることに加え、自動車業界の殻を破ったような自動運転に技術者として携われるのは自分としても大きなチャレンジになると考え、入社を決めました。
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私は前職で、デジタルカメラやレンズ内部の機構部品などの設計を9年間行っていました。カメラ領域の技術は成熟が一段落している印象を持っていたため、新たなチャレンジができる会社に転職しようと考えたんです。
その頃Hondaで募集があり、世界初の自動運転技術の研究開発に携われるのが魅力的で転職を決めました。
藤田と中山は、それぞれ転職後1年目から最先端の自動運転領域に携わることになりました。
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モノを作るために設計するという仕事の進め方のベースは、前職も今も変わりません。転職直後は領域の大きさの違いに戸惑いがありましたが、私も中山も前職で精密部品を取り扱っていたので、より高い精度が求められる自動運転でもこれまで培ってきた知識を活かせたと思います。
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確かに、ロジックを組み立てていくところは共通しているので、前職の積み上げが転職後も活かせたところはありますね。私たちのように中途入社の社員も多く活躍している部署です。
新型LEGEND開発プロジェクトでは、機能性とデザイン性の両立に苦戦
2021年3月、Hondaは世界初の自動運転レベル3の技術を搭載した新型LEGENDを発売しました。従来のクルマ以上にさまざまなセンサが必要になる自動運転車で、藤田は「LiDAR(ライダー)」、中山は「RADAR(レーダー)」と呼ばれるセンサの設計を担当しました。
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新型LEGENDには前方向に2カ所、後ろ方向に3カ所のLiDARが付いています。LiDARは光を飛ばして反射し、キャッチしたところで動きを感知するセンサなので、光を遮ってしまってはいけません。
そのため前面のバンパーに違う部品を被せることはできず、車の外にセンサを露出させる必要があります。機能性だけでなくデザイン性も両立させなければならないので、クルマと調和したセンサを設計するのは苦労しました。
また、LiDARは従来センサの約10倍程度の重さがあります。私は他領域から来たのではじめはセンサの大きさがわからず、性能を確保するためにこのくらい必要だと車両設計担当者に伝えたら『戦車を作る気か』と言われてしまいました (笑) 。きちんと機能を持たせたうえで軽量化するというのも大きな課題でしたね。
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RADARもLiDARと同じく5個付いています。RADARは電波なので意匠(デザイン)の裏に隠せますが、電波を透過させるためにバンパーの品質も担保しなければならず、バンパー担当者と議論を細かく重ねる必要がありました。
また、HondaでこのRADARシステムを立ちあげるのがはじめてであり、かつ新規のサプライヤーさんとの開発でした。そのため、システム開発のメンバーと一緒に、初期からシステム開発をした点が非常に苦労しました。
Hondaは長年のクルマづくりによって、技術を積み重ねてきました。熟成された技術と新たな技術のバランスをどう取っていくかは、非常に苦慮しましたね。
自動運転車を仕上げるための設計は、センサ担当者だけでできるわけではありません。LiDARもRADARも、バンパーをはじめとする他領域と協力しながら開発を進めました。
周りを巻き込むことができ、背中を押してもらえるHondaの風土
新型LEGENDプロジェクトのなかで、中山は経験が財産になることを強く感じました。
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設計を進めるために、さまざまな領域の方にヒアリングをしたり何が最適なのか議論を重ねたりする必要がありました。自分が裾野を広げれば広げるほど仕事は大変になりましたが、そのときに生まれた付き合いは今の業務にも活きています。
新型LEGENDをきっかけに他の自動運転プロジェクトのPL(プロジェクトリーダー)を務めるようになり、部品ひとつではなくクルマ1台の検証を実施する経験も得られました。そのときに築いた人間関係もプロジェクトの経験も、私にとって貴重な財産ですね。
さらに、新型LEGENDプロジェクトは、転職直後のふたりがHondaの良い風土を発見する機会にもなりました。
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機能と設計がバラバラに動く会社もあると思いますが、Hondaは機能と設計の担当者がお互いの領域に足を踏み入れて一緒に進めて最適化しており、すごくいいなと思いました。
前職はカメラという小さい領域だったので、ひとりでもある程度進められたんです。小回りが利くのは良かったですが、クルマはひとりでは何もできません。大勢を巻き込みながら推進していくこと、またその風土があるのは大変でしたがおもしろかったですね。
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開発に限らず外国の方と英語でやり取りしながら、他国のサプライヤーさんとの仕事を通じ他国の文化や風土なども吸収できるのは貴重な経験でした。
ときには海外出張が必要なこともありましたが、自分が現地に行って交渉しまとめる必要があるんだと適切に主張すれば、年次に関係なく背中を押してもらえます。ハードルが高いことに対しても『やってこい』と言って任せてくれるHondaの風土を感じましたね。
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私も海外出張にはたくさん行かせてもらいました。『担当の君がLiDARを一番わかっているんだから、行ってこい』と言ってもらい、現地で直接会って話すことでプロジェクトが進んだこともありましたね。必要なことであれば、経験年数は関係なく認めてくれる風土を感じました。
お互いの長所を活かしながら切磋琢磨するふたりが今後チャレンジしたいこと
入社当初よりも多様なセンサに関わるふたり。直近の製品化につながるプロジェクトと、未来への第1歩となるプロジェクトの両方を推進しています。
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RADARやLiDAR以外にも、自動運転車に搭載するセンサはたくさんあります。現時点ではひとつのセンサに特化するのではなく、幅広いセンシングデバイスに携わっている形ですね。
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次世代のシステムを開発するために、ふたりで複数のセンサを担当しています。開発する領域が増えてきたからこそ、日々苦労はありながらも新しいことを進めていますね。
ほぼ同時期に入社してセンシング領域に携わってきたふたりは、お互いの長所を活かしながら切磋琢磨しています。
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中山は自らメンバーを引っ張り、目標に向かって推進する力が高いです。私は周りのメンバーが力を発揮しやすい環境をつくり、ケアしながら目標を達成していくのが得意です。長所が違うからこそ刺激になって、ふたりで成長していけます。
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私も藤田から学ぶことが多く、お互いにいいところと悪いところを共有しながら切磋琢磨してきました。中途入社メンバーが多い部署なので、それぞれの経験を活かし補い合いながら仕事を進められるのはいい点ですね。
自動運転の技術開発を進めるなかで、Honda内でもセンシング領域の重要度が広まっているのを実感しているふたり。これからのクルマづくりで挑戦したいことも、それぞれ考えています。
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事故を未然に防ぐ予防安全技術はお客様にとって大きなメリットとなり、今後不可欠になると感じています。その一方で、お客様に喜んでいただけるよう、最適なデザインやコストでプロダクトを提供しなければなりません。
設計は非常に重要な部門だと思っており、この部門によって開発している自動運転に必要な技術、知見をHonda内にどんどん広げていき、より良いクルマづくり、お客様の喜びにつなげたいと考えています。
Hondaは手を広げれば広げるだけチャンスが得られる会社なので、経験を活かしつつお客様の記憶に残るようなプロダクトにチャレンジしたいですね。
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Hondaに入社するまでは、世界初のモノに大々的に携わる機会はありませんでした。新型LEGENDのLiDAR開発に携われたのはすごくいい経験になりましたし、モチベーションにもつながりました。
現在携わっているセンシング技術は、クルマだけでなく汎用機器などHondaのさまざまな領域で展開できると信じています。今後はこれまで携わってきたクルマ以外の領域まで手を伸ばし、世界初のプロダクトに携わっていきたいです。
自らの経験を活かして入社直後から開発に貢献し、より高い目標へと歩みを進めているふたり。
次世代のクルマづくりにおいて重要であるセンシング領域で、これからもお客様に喜んでいただけるように挑戦を続けます。
※記載内容は2022年9月時点のものです