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四竈 真人 MAHITO SHIKAMA
本田技研工業株式会社
電動事業開発本部
SDV事業開発統括部
統括部長
2002年、本田技術研究所に入社して、エンジン制御開発に従事。アメリカ駐在を経て、2015年から自動運転開発プロジェクトリーダーを務める。2020年からHondaの先進技術研究所で、AD/ADAS研究開発室長を務める。2022年、本田技研工業・電動事業開発本部ソフトウェアデファインドモビリティ開発統括部に統括部長として異動。2024年10月より現職。
ソフトウェアエンジニアがリードするHonda第二の創業期
ソフトウェアの力を最大化するためにハードウェアを開発——アップデートで「不定」「無限」への対応を永続的に
「SDV」という言葉を様々な場面で耳にすることが増えていると思います。
クラウド通信を活用することで、自動車の機能を継続的にアップデートし、運転機能の高度化など従来車にはない新たな価値を実現可能にする次世代自動車「ソフトウェア・デファインド・ビークル(SDV)」が世界の自動車産業界で注目されています。
Hondaは様々な陸・空・海を動く乗り物、モビリティを作っているため、「ソフトウェア・デファインド・モビリティ(SDM)」という表現が適しているでしょう。
クルマは人の命を預かるという、アプリ開発とは違った難しさがあります。しかし、これからは、クルマもソフトウェアに本気で取り組まなければならない。それがSDVであり、SDMの時代なのです。
また、SDVはソフトウェアでクルマをパーソナライズ化することも可能になります。つまり、SDVとは、個々のニーズに即したカスタマーデファインドでもあるのです。
ソフトウェアエンジニアがイノベーションを生み出せる環境と、変化する事業構造に新しい提案を
SDVの開発を担うのは、主にソフトウェアエンジニアです。そのため、ソフトウェアエンジニアが新しい価値を生み出す環境を作ることが重要なのです。
SDVでは、ソフトウェアアップデートでクルマを進化させることが求められており、そのためには開発者自身のマインドセットを変えることが必要です。
かつてのハードウェア開発では「石橋を叩いて、渡らない」が当たり前でした。私たちのような歴史のあるメーカーは成功体験に縛られがちです。企画から検討・開発まで、安全性確認に数年間を費やして、ローンチする開発に取り組んできました。
しかし、ソフトウェア開発においては、失敗も覚悟の上で、試して改良するというサイクルをスピーディに回すことが大切です。
その超高速サイクルの中から様々なイノベーションが生まれるので、ソフトウェアエンジニアが楽しみながら集中できる環境作りが最も重要だと考えています。
これからはソフトウェアエンジニアが事業変革の中核に入り、業界全体が変わる第二の創業期に身を置いてほしい。その事業変化を楽しみ、新しい構想を提案したいという人材にこそ、集まっていただきたいのです。
最近では、Hondaはドローン、宇宙ロケット、アバター技術まであらゆる領域に挑戦していて、SDVにより新しいシナジーが生まれつつあります。
これはHondaの強みでもあるのですが、このような潮流の中で、もはや「クルマが好きである」ことさえ、入社の条件ではなくなっていくでしょう。
スキルセットの観点では、もちろん組み込みソフトウェアやAIなどの専門技術と経験は重要です。ただ、この先はITエンジニアの専門性の垣根はなくなっていくでしょう。
これからは、AIやクラウドに専門性をもちながらも、ビークルOSやソフトウェアプラットフォームにも関心があるマインドセットの人が、大変重宝されるのではないでしょうか。
私たちも異分野エンジニアとの交流を通じて、複数のドメインにまたがる融合技術をもつ、「SDVエンジニア」という新しいエンジニア像を生み出したいと考えています。
モビリティ開発は、人間の際限なき欲求「移動」に関わる事業
Hondaの技術風土を象徴する「技術の前ではみな平等」は、単なる宣伝文句ではありません。ボトムアップ文化も、Hondaの伝統です。
私たちはモビリティ開発をやっていますが、モビリティとは人間の根源的な欲求である好奇心を満たすための事業です。
好奇心は、満たせば満たすほど大きくなり際限がない。こうした根源的な欲求を満たすためにあるのが、モビリティというビジネスなのです。
未来のモビリティについて好奇心をもち、ソフトウェアの力でその形を実現する。この100年に一度あるかどうかというダイナミックな変動期にこそ、その夢を従業員と共有しながら進んでいきたいと思います。